小説『神去なあなあ日常』(三浦しをん)の感想。気持ちよく引き込まれるストーリーと描写

昨年から森林ボランティアをしていて、映画「WOOD JOB!(ウッジョブ)」が気になっていたのですが、映画館での上映は見逃してしまいました。

その原作である三浦しをんさんの小説「神去なあなあ日常」を図書館で見つけて借りてきました。



林業がどう描かれているのか、気になったのですが、途中からストーリーに引き込まれていきました。舞台となる三重県の神去村というのはモデルとなった村はあるが架空の村で、登場人物たちが話す神去弁も想像上の方言なのですが、あとで調べてみるまで、この神去弁というのが実際に存在するのだと思うくらいこの物語の世界に溶け込んでいて、全体的に、取材した実際の林業の世界や山の暮らしと、想像上のストーリーが心地よく融合していて、どんどん先を読み進めたくなりました。

都会育ちで 高校を出てすぐに林業の世界に放り込まれた勇気が書いた生活記録という形で書かれており、風景の描写は控えめに書かれているように思いますが、端的な描写で、文章から五感に働きかけてくるものがあります。

とにかく、読んでいて気持ちがいいです。山奥の人間関係が密な暮らしは大変そうでもありますが、読んでいる分には、ときどき涙腺が緩んでくるところがありました。登場人物が魅力的です。舞台となった村や林業の世界を丁寧に描きつつ、読者を楽しませようとするプロ意識のようなものが伝わってきました。

山や林業に興味がある人、田舎暮らしに興味がある人、都会暮らしに疲れている人…誰が読んでも楽しめる作品だと思いました。


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by 硲 允(about me)
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