海苔の「酸処理」とは?本来の海苔は真っ黒ではなく、柔らかくて自然な甘みがある


高松の春日水神市場で相方が買ってきてくれた、鹿児島県出水産の酸処理していない焼のり。

のりの「酸処理」というのは聞いたことがあるけれど、よく知らないので調べてみたら、これからは必ず酸処理していない海苔を選ぼうと思った。

海苔が育てられている現場を見たことがないが、海苔というのは、海に網を張って養殖されるらしい。

その海苔は、潮が満ちているときは海の中、干潮時には海水から出て太陽や風にさらされる。

海には、山から川を経て流れてくる養分があり、水に浸かっているときにはその恵みで育ち、干潮時には日光や風を受けることで雑菌や病原菌がいなくなり、海苔は元気に育つという。

海苔の養殖はもともとはこのようなものだったけれど、海苔を速く大量生産する方法を求めた結果、「酸処理」という方法が生まれたようだ。つまり、海苔は海水に浸かっている間に大きくなるのだから、ずっと浸けておこう、と考えた。ところが、ずっと海の中では海苔を殺菌する時間がないため、病気にかかりやすくなったらしい。そこで、日光浴による殺菌の代わりに、酸に浸して消毒するようになったという。

酸処理した海苔は硬くなり、風味も香りも落ちるが、色は黒くなって黒いほうが好まれるという。ぼくは真っ黒な海苔よりも、いろんな色が複雑に混ざった酸処理されていない海苔の見た目のほうが好きだけど、酸処理されていない海苔を見るまでは、海苔というのは真っ黒なものだと思っていた。

そういえば、コンビニのおにぎりの海苔は真っ黒で硬い(機械で処理するには硬いほうが扱いやすいらしい)。あのパリっとしたのが美味しいと昔は思っていたけれど、酸処理されていない海苔の自然な甘みを知ると、コンビニのおにぎりの海苔は味気なく紙のように感じられる。

酸処理に使われるのは、クエン酸やリンゴ酸などの有機酸のほか、塩酸、硫酸、リン酸などの無機酸を使用している業者もある、との話もある。使用後の酸処理剤は、陸地に持ち帰って中和剤で中和してから下水に流すことが義務づけられているようだが、中和せずにそのまま海に投棄してしまう業者もあるそうな…。

子どもの頃から、当たり前のように食べてきた海苔。つくられている現場を見たことがなければ、知識もなければ、何となく植え付けられてきたイメージでしか想像できない。海苔というと海で育った(どう育つかまでは具体的にイメージしたことすらなかった)自然な食品、と思っていたが、大量生産の裏側にはそんな方法が確立されていたとは。

そんなことを知ると、酸処理されていない海苔が一層ありがたく感じられる。


海苔本来の甘みが何とも美味しく、海苔だけでバリバリ食べたくなる。「味付け海苔」なんていうのがあるけれど、この海苔は余計な味付けをするのがもったいない自然な旨味がある。


久しぶりの巻き寿司に。おむすびにしても美味しそう。