ボール紙に好きな布を貼って畳(床)に敷き詰めるという美輪明宏さんのアイデア。「人間は保護色の生き物」らしい

絨毯(じゅうたん)や畳は、化学物質や農薬を使っていないものを選ぶとずいぶんな出費になる。今住んでいる家は、お借りしている仮住まいだし、そこまでのお金をかけるわけにいかないし、何かいい方法がないだろうかと前々から思っていたところ、「毎日がときめく片づけの魔法」(近藤麻理恵 著)で紹介されている方法が気になった。

美輪明宏さんが、かつて古いアパートに住んでいた頃、段ボールに好きな布を張って、それを床に敷き詰めておしゃれな部屋をつくっていたという。「美輪明宏のおしゃれ大図鑑」という本に載っているらしく、それを見てみたくて購入した。



昔住んでいた部屋なので、写真はなく、本に載っているのはイラストだが、ピンクと黒をテーマカラーにしたお城のような部屋だった。

絨毯を買うお金がなかったので、大きなボール紙にカーテンと同じ生地(ピンク色)を貼り、それを畳の上に敷き詰め、畳用の鋲で固定したという。「すぐにずれたりはがれたりして、本当に苦労しました」とのことで、簡単ではなさそうだけど、好きな色や柄の布を使って床を敷き詰めると部屋のイメージが一変しそう。

ちなみに、美輪明宏さんの6畳ひと間の当時の部屋は、ピンクのカーテンに黒い幅広リボンを代用したタッセル、ピンクのペンキを塗ったタンスや電蓄(レコードプレーヤー)、ピンクの布をかさに縫い付けたランプシェード、白黒の市松模様の布を貼り付け、ハリウッド女優のブロマイドや造花を飾り付けた押し入れ(の扉)、といった様子。あまりに居心地がよかったようで、ボーイフレンドたちがなかなか帰ろうとしなかったらしい。

ぼくは部屋や身の回りを整えたり飾ったりすることにずいぶん無頓着に生きてきたけれど、最近、片付けを本格的に初めて、その重要性に気付き始めた。

美輪明宏さんが空間やインテリアについて語る言葉には実践に基づく深いものがこもっている。

いる場所によって体の色が変わってしまうカメレオンのように、人間もまた、保護色の生き物なのです。日頃住み慣れた場所の空気や雰囲気はあなたの細胞にしみつき、オーラのように発散されて、隠しようがありません。つまりインテリアは、あなたが思っている以上にあなた自身に大きな影響を及ぼす、重要な要素なのです。
美しく、おしゃれな部屋に住んでください。無理に引っ越したり、お金をかける必要はありません。今住んでいるあなたの部屋を、知恵と工夫でつくり替えてしまえばよいのです。(p. 37-38)

お金をかければ、すぐに簡単に部屋を飾ることができるかもしれないが、知恵と工夫を使ってこそ、その人らしく、その人にとって居心地のいい部屋ができるのかもしれない。美輪明宏さんの六畳一間の「お城」は、まさにそれを体現されている。

店で高価なものを買っても、買うときはうれしいが、その喜びが長続きするとは限らない。買う喜びもいいけれど、つくる喜びは一層大きく、長続きしやすいと思う。


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by 硲 允(about me)
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