貊村の株主になる。「れなり」という新しい時代のオリーブオイル


この春から貊村(みゃくそん)の「れなり」というオリーブオイルを使っている。貊村のパンフレットには、「貊村は、日本中の家庭で、良質なオリーブオイルで天ぷらを揚げられるようにする会社です!」と書かれている。

日本の家庭でよく使われている一般的なオイルは、原料の菜種に遺伝子組み換えのものが含まれていたり、精製の過程で化学物質が使われていたり、いろんな危険性が指摘されている。

高額なオリーブオイルの場合でも、薬品で抽出した再生オイルが混入していることがあるらしい。オリーブオイルの果実には約20%のオイルが含まれていて、オイルを抽出するために使われる温水の温度が高ければ高いほどたくさん抽出できるけれど、高温の温水を使うと風味が落ちてしまうので、高級オイルをつくる際には「コールドプレス製法」と呼ばれる低温・低圧の抽出方法が用いられる。すると、搾りカスにまだ10%ほどのオイルが残り、これを高温・高圧下で薬品を加えて化学反応させると、残りのオイルを完全に取り出すことができるらしい。この搾りかすオイルが再び精製加工され、最初に絞ったオイルに混ぜられているとのこと。「エキストラ・バージン・オイル」と書かれていても、搾りかすに薬品を加えて抽出した搾りかすオイルが混ざっていることもあるのだろう。

貊村は、マリナレダ村という、年間450トンの混ぜ物なしのオリーブオイルを生産している(2番絞りのオイルをつくるために設備投資する余裕がそもそもなかったらしい)村と出会った。村のオリーブオイル畑では多少の化学肥料が撒かれていたけれど、今後オーガニックオイルの需要が高まると予想していた工場長がその数年前から一部の畑を無農薬・無肥料栽培に切り替えていたらしく、そのオイルをタンクで一括購入することになった。低質なオイルの混入を防ぐためにその場で瓶やプラスチックボトルに詰めて運んでいるらしい。

どうやって、「日本中の家庭で、良質なオリーブオイルで天ぷらを揚げられるようにする」かというと、配当を求める株主ではなく「やりがい」や「生きがい」を求める1万人の株主を集める。つまり、これまでの企業のように会社を維持・発展させるための内部留保や配当金を無しにし、消費者(株主)に届くオリーブオイルの価格を「原価」+「総経費」としている。

それによって、最初の商品「れなりゴールド」は、500ml入りで1,200円という価格が実現した。このクオリティのオリーブオイルでこの価格は驚き。2016年9月に500ml換算で5万本入荷し、翌年4月に売り切れとなり、現在は第2弾の「れなりグリーン」が買える(「れなりグリーン」はマレナレダ村とは別の組合から仕入れているとのこと)。株主が2万人に増えれば(8月22日の時点で8766人)、オイルの大量仕入れや時間的な経費削減が可能になり、当初1,200円だった「れなりゴールド」と同等のオイルを1,000円で販売することができるらしい。

1,000円支払って株主になると、こんな株券が送られてきた。


「れなりゴールド」も「れなりグリーン」も風味が豊かで、いかにも健康によさそうな味がする。炒め物で使ったり、パンにかけたり。


生野菜を「れなり」と塩だけで食べるのも好き。


先日、貊村から株主総会のお知らせが届いた。株主総会での議案が株主に事前に知らされ、承認できない議案がある場合、事前に申し出ることができる。株主総会は、当日、インターネットで生中継された(ぼくは他の予定があって参加できなかったので、後日、録画で見た)。

株主や商品購入者からの問い合わせにも、ウェブサイトでしっかりと回答してくれている。一番上の写真のように、左側の「れなりゴールド」は遮光ビンに入っていたけれど、「れなりグリーン」の詰め替え用はプラスチックボトルになった。オリーブオイルの品質を保持し、健康の安全面で心配が少ないのは遮光ビンだと思っていたので「あれ?」と思ったら、やっぱり同じように思う人が多かったらしく、その疑問への回答が詳細に書かれていた。それによると、食用油専用の耐油性があるプラスティックボトルを使用していて、一般家庭に広く行き渡らせるためのコスト削減や、ごみの削減などを優先しているとのこと(色付きガラスのほとんどがリサイクルされずに埋め立てゴミになっているらしい)。遮光ガラスの方が使っていて気持ちがいいけれど、そういう事情があるなら今のところプラスチックボトルでも仕方ないかぁと思った。

貊村では将来的に、オリーブオイルだけでなく、お米や味噌など、いろんな食品をこのシステムで販売していく計画らしく、今後も楽しみ。


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by 硲 允(about me)
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