2016/03/14

沖縄の星野リゾート「星のや竹富島」の裏側。外部者だからこそできることもある。


昨日、高松で三線ライブと沖縄の文化を学ぶ会に参加してきました。

ぼくは沖縄には高校の修学旅行で行ったくらいで、紫イモを掘り、ペットボトル入りのさんぴん茶を飲んだことくらいしか覚えていません。

沖縄の島々の風景を写真で見せてもらい、現地での体験談をお聞きして、また訪れたいなぁと思いました。

「竹富島(たけとみじま)」という島のお話が出ました。ぼくはその名前すら聞いたことがなかったのですが、石垣島から約6キロ離れた小さな島です。



この竹富島に、「星野リゾート」が入っていったために、島の住民たちが分裂したとのお話でした。

「星野リゾート」といえば、社長の星野氏がNHKの「ザ・プロフェッショナル」で取り上げられているのを見たことがあります。「旅館再生」のプロ、というような形で紹介されていたように思います。その後、いろんなメディアでたまに見掛けても、好意的に取り上げたものしか見たことがありませんでした。

ネットで調べてみると、この問題を取り上げた情報がいろいろ出てきました。

池袋で「たまにはTSUKIでも眺めましょ」というバーを営み、その他、いろいろな活動をされている高坂勝さんが、ブログでわかりやすく書かれています

ここはどんな島なのか・・・高坂さんの描写を読んでいると、ますます行ってみたくなります。

私はこの島に恩を感じております。
会社員時代に心疲れていたとき、ここにたどり着きました。
それはそれは、美しい。
海も町並みもこの世のものとは思えないほどです。
集落の赤瓦屋根とその屋根に座る微笑ましいシーサーたち、
サンゴの白砂を敷き詰めた道、
水牛、山羊、サギ、ホタル・・・も一緒の暮らし、
敷地内で野菜を作る自給的営み、
歴史も深く、神の宿る島です。
和んだ空気の中を三線と「安里屋ユンタ」の唄が
風に吹かれて聞こえてきます。

沖縄の伝統的風景が残る、数少ない場所だそうです。

1987年に国により重要伝統的建造物群保存地区として選定され、
その景色と名前は全国的にも知名度が高い島です。
かつては竹富島のような風景が沖縄のあちこちにあったのですが
沖縄戦で焼き尽くされ、
現在では他に渡名喜村のみが国から選定されています。
島での行事・種子取祭(タナドゥイ)は、
約600年の伝統があると言われ、
国の「重要無形民俗文化財」です。

Taketomi_竹富島_17 / ajari

アイヤル浜(竹富島)
アイヤル浜(竹富島) posted by (C)シンタロ


こうした対立の状況を島の内部からもっとも克明に伝えているのは、「竹富島憲章を生かす会」による、「竹富島でのリゾート開発について全国の幅広い意見をお願いするためのサイト」。

数多くの問題点が指摘されています。

  • 住民の自治への介入と自治の崩壊(住民投票の阻止など)
  • リゾート推進のための島内・島外への圧力
  • 住民への説明不足やウソの説明
  • 住民の声を無視したり封じようとしていること
  • リゾート開発者への島民の経済的従属が生じること
  • 自然破壊
  • 景観破壊
などなど。

このサイトに書かれていることをいろいろ読んでいると、とにかく巧みに、住民の反対を抑え込み、封じようとしていたのが伝わってきます。

星野リゾートをはじめ開発者側は、3月31日の公民館総会において住民の多数がリゾート開発に賛成したと主張しています。しかし、この総会自体、リゾート開発の賛否をとるなどとは一切事前に告知せずに、反対派住民複数名を総会から排除し、開発者側が面前で取得した多数の委任状や、面前で反対できない者を総動員して、リゾートについてほとんど議論すら行われずに強行採決されたもので、全く島民の真の意思を反映したものではありませんでした。

日テレNEW24でもこう報道されています。
3月に行われた島民の意思を集約する公民館の総会で、島民の過半数にあたる159人がリゾート建設に賛成した。反対は19人だった。星野リゾートはこれを受けて、竹富町長に工事の着手届を提出した。

一方、反対派は、「リゾート開発の賛否を取る」と一切事前に告知されないまま、大量の委任状で決議されたとして、あらためて無記名での島民投票を求めていく考え。
リゾート開発に揺れる沖縄・竹富島の現状|日テレNEWS24

リゾート推進側は、島社会のことをよく知ったうえで、住民を動かそうとしていったことが、竹富島憲章を生かす会の公開討論会の書きおこしを読むとわかります。

リゾート推進をしている人はですね、竹富島の島社会をよく知っている、ですからそうような人たちは、結局あのお爺さん、あのお婆さんのところにはあんたが行ったら絶対反対しないよ、反対でもいやとは言わないよ、いうような状況を全部知り尽くしているわけですから、こうゆう島社会の中で、こうゆう状況をよくわかっているので。

本当は反対している人でも、「反対」の声を挙げられない状況をつくっているわけです。

だけれども、島の人たちは決して馬鹿ではないですから、無記名で住民投票をやったら本当の自分の真意を意思を投票してもらえる。そのようなことを我々は確信しておりますので、そうゆうようなことであれば本当の島の人の気持ちは表れると、そして反対が多いと我々は自信を持っているわけです。と言うのは、お爺さんお婆さん達から電話もよくあるんですよ私のところに自分はまともに反対できないけれども、しかし怖いとだから反対できないけれども、頑張ってくれとゆうような電話は数多くある。

竹富公民館の臨時総会で、リゾート計画の実施の賛否について住民投票を実施することが決議されましたが、星野社長は、竹富公民館の自主性を尊重するといいながら、「住民投票は実施することには問題がある」との発言を繰り返し、結局、住民投票は行われなかったようです。

それまで、竹富島では、一度決議されたことを公民館の執行部が執行しないことは一切なかったそうですが、このように、リゾート開発が行われる前ですら、竹富島の自治の崩壊が始まっていたとのこと。
今後も星野氏は、星野リゾートの利益確保のためにはためらわずに自治に介入するでしょう。しかも星野リゾートの従業員約70名が島内に居住し、公民館の議決権を持つことになります。
こうなれば、これまでの拮抗したバランスの上に成り立っていた民主主義はくずれ、もはや、公民館組織などというのは名ばかりで一人の実力者が突出した「星野島」になってしまうでしょう。
私たちは、決してこのような島の将来を望みません。私たち島民が主役になって、これまでしてきたように、この美しい島を守り、生かすべきであると強く考えます。

竹富島には、「竹富島憲章」というものがあります(昭和61年にできたそうです)。

竹富島憲章は、今日の世界資本主義体制と私権の絶対性の中で文化・思考が均一化していくというグローバリゼーションに対する地域性の保持の試みとして、極めて先駆的なものでした。つまり、外部資本による土地の取得や開発を排除することで、外部資本の乱開発を防ぐとともに、島内で上がった利益を島内に環流させて、島の伝統、民俗文化、町並み、自然そして私たち自身の生活を守るものです。

前文は以下。非常に力強い想いがこもっているのを感じます。

われわれが、祖先から受け継いだ、まれにみるすぐれた伝統文化と美しい自然環境は、国の重要無形民俗文化財として、また国立公園として、島民のみならずわが国にとってもかけがえのない貴重な財産となっている。
全国各地ですぐれた文化財の保存と、自然環境の保護について、その必要性が叫ばれながらも発展のための開発という名目に、ともすれば押されそうなこともまた事実である。
われわれ竹富人は、無節操な開発、破壊が人の心までをも蹂躙することを憂い、これを防止してきたが、美しい島、誇るべきふるさとを活力あるものとして後世へと引き継いでいくためにも、あらためて「かしくさや うつぐみどぅ まさる」の心で島を生かす方策を講じなければならない。
われわれは今後とも竹富島の文化と自然を守り、住民のために生かすべく、ここに竹富島住民の総意に基づきこの憲章を制定する。

「売らない」「汚さない」「乱さない」「壊さない」「生かす」という、保全優先の基本理念をはじめ、美しく、秩序ある島を守り、観光関連業者の節度を守り、島のよさを生かし、外部資本から島を守るための項目が細かく定められています。

今の竹富島のよさは、元来の独特の自然、歴史、文化に加え、島民が土地の買い戻し運動・竹富島憲章を実践したことにより、島民自身の町造りを行ってきたが故に、貴重な竹富島独自の自然、伝統、民俗文化と景観、一言で言えば独特の文化が保存されてきたことにあるといえます。これと人情味あふれる島の人達が、世界中の旅行者を魅了し続けてきました。
しかし、竹富島憲章が破棄されれば、直ぐにこの地域性の保持は実現できなくなり、グローバリゼーションの中で均質化に向かう、どこにでもある、何の変哲もない一つの離島になってしまうでしょう。そうなれば、竹富島のよさは全く失われてしまいます。

星野リゾートは、島民たちが先祖から受け継ぎ、育んできた伝統、民俗文化、町並みなどの景観と自然をあてにして、リゾート開発に乗り出していることは明らかだと、「竹富島憲章を生かす会」は述べています。

自然については私たち島民のみがその利益を享受できるという道理はないでしょう。しかし、この町並み、景観は、私たちが長年にわたって、ときに窮屈に感じることがあっても我慢し、努力を続けてきた結果、形成、維持されてきたものなのです。竹富島憲章は、一面で、島民の犠牲により、島の観光資源を育て産業化し、それを島内に還元することで島内の活力を維持する、そういう試みなのです。それゆえ、この努力が実った現在の観光客の増加による利益は、私たち島民に帰すべき理由がありこそすれ、それをあてにして利益を得ようとする外部資本が得られる道理はないはずです。

その通りだと思います。島の人々の声を無視し、無視するどころか巧みに封じ込めようとするのは野蛮な行為です。

経済的にも、これまで島民自らが維持してきた島が、星野リゾートの経済力に完全に依存する島となることは目に見えています。こうなれば、自然、伝統、文化及び町並みの保存は、島民の生活を守るために、島民の手で行われるのではなく、星野リゾートの利益になる範囲でその利益になる限りにおいて行われることになるのです。こうなれば、もはや「私たちの生活」はどこにもありません。
このような事態こそが、竹富島憲章がおそれ、防止しようとしていたことなのではないでしょうか。

結局、住民たちの反対は叶わず、「星のや竹富島」が2012年6月1日にオープンしました。

星野リゾートウェブサイト より


「竹富島憲章を生かす会」のウェブサイトの更新は、オープン前で途絶えています。

その後、竹富島では何が起き、反対していた島の人々、あるいは賛成派だった人々は、今、何を感じているのでしょうか。いつか、ぼくも竹富島を訪れてみたいと思います。自分の肌で感じてみたい。

それにしても、こういう問題は、日本の、そして世界のあちこちで起きている問題だと思います。昔から守られてきた風景や伝統や文化や価値観の残る場所へ、大資本を持った者が入っていく・・・そこで、調和や生かし合いではなく、対立と破壊が生まれる。

竹富島では、住民たちが反対していたリゾートがすでにできてしまいました。しかし、こうしたことを再び別の場所で繰り返さないために、できることがあるはずです。

前述の高坂勝さんがメールマガジンでこの問題を取り上げたところ、「竹富島憲章を生かす会」へのアクセスが2倍になったそうです。

高坂勝さんはこう書かれています
島の中では反対している方が居ます。
心では反対の人が多いのですが、
声をあげるのは「清水の舞台から飛び降りる」ほど
勇気がいることなのだそうです。
島内には様々なしがらみがあり、
リゾート開発の推進者が島内で様々な事業を手がける実力者であり、
島民の方々は圧力を感じているそうです。

内部で問題の渦中にある人々は、正直な声を挙げられない状況に追い込まれていることがあります。しかし、外側からでも、状況に変化を与えていくことができます。

福島の問題にしてもそうでしょう。関東でもある程度そうですが、原発や放射能のことは、周りの人にも話しにくい雰囲気があるし、声を挙げにくい状況に追い込まれている人がたくさんいます。

当事者以外があれこれ言うと、正義を気取っているとか、偽善者とか、よけいなおせっかいとか、思う人もいますが、結局は自分のためでもあるわけです。

「恩を感じている竹富島を守りたい」「誰もが安全で健康で暮らせる平和で楽しい世界をつくりたい」・・・そういうのは自分のためでもあります。自分のためであり、他人のためでもある。「自分のため」が、他人の不幸ではなく幸せにもつながるのであれば、「自分のため」というのは大きければ大きいほど、広ければ広いほどいい。

長い記事になってしまいましたが、最後に、竹富島に伝わる民謡「安里屋(あさとや)ユンタ」をYouTubeからご紹介します。






by 硲 允(about me)
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