日本にいながら「英語漬け」になるには英英辞典がオススメです。


翻訳の仕事をしていると話すと、「外国に住んでいたの?」ときかれることがありますが、ぼくは海外で暮らしたことがなく、旅行にもほとんど行ったことがありません。

英語は、日本で本を読んで勉強しました。学校の教科書や塾のプリント、書店で自分で見つけてきた参考書、洋書など。それから、愛用の辞書たち。

今までで一番「英語漬け」のような状態になっていたのは、高校生の頃です。当時、ぼくは他の教科にはほとんど関心がなく、英語ばかり勉強していました。他の教科の授業中にも、自分で作った英単語ノートをこっそり開いて暗記したり、他の教科の教科書を英語に訳してみたり。

一時期、頭の中をもっと英語だけにしようと考え、英和辞典を一切使わず、英英辞典だけを頼りにしていたときがありました。

知らない単語に出会ったら、それを英英辞書で調べ、自分の単語ノートに、英単語と発音と、英英辞典に載っている英語での定義を書き写しました。その定義の中に知らない単語が出てきたら、それをさらに英英辞典で調べます(最初のうちはそれが何回も続くことがあります)。

英語の定義を読むと、日本語訳を見るよりも、その単語のニュアンスがよくわかります。日本語の定義というのは、英語の定義に基づいて、それを日本語に置き換えるとすればどういう日本語があてはまるか、ということで、あてはまる可能性の高いものを複数載せるわけですが、もともとの英語の厳密なニュアンスというのは、英英辞典の定義を見たほうがくっきりとわかるものです。

慣れてくると、英英辞典の定義を見れば、日本語ではこういう訳になるだろうな、というのが、すぐに思い浮かぶようになります。しかし、自分の頭の中には、英語の定義を読んでイメージした概念が残りやすい。

ポイントは、日本語の訳語をそのまま覚えておくよりも、英語の定義で頭に入れておいたほうが、英語の文章を読んだときに、いちいち日本語に置き換えなくても意味が理解できるようになる、ということです。日本語を介さずに、英語を英語のままで理解する回路を育てていくことになります。

これはそんなに特別なことではなく、なじみ深い英単語の場合、誰もがそういうふうに読み取っているはずです。「cat」という単語を見ると、瞬時に猫の姿を思い浮かべる人が多いでしょう。「cat」って、「猫」だな、と日本語に置き換えてからようやく猫をイメージするのではなく、catから一直線に「猫」の概念にたどりつくのではないかと思います。

ところが、なじみのない単語となると、英語と日本語を一対一で暗記した日本語訳を思い出して、それからようやくその概念にたどりつく、という道筋をたどることになります。

英単語を、一対一の日本語訳を介さずに覚えていくと、いちいち日本語を思い出さずにその英単語を理解できるようになると考え、ぼくは当時、英語の勉強中に日本語を自分の頭の中から徹底的に排除するようにしていました。

その効果はあったようで、長文を読むスピードが上がりました。

ところが、日本語に訳すのに時間がかかるようになり、解答にスピードが求められる受験ではこれは困ると思い、途中から、また日本語も介した学習法に戻しました。とはいえ、一時、英語だけの回路を作ってみたことはよかったと思っています。

頭から日本語を排除して英語の勉強をしていたあるとき、家にたまたまあった日本語の漫画を手に取って読んでみたところ、文字を目で追っても全然内容が頭に入ってこないことがありました。「ここまで英語脳になったんかぁ」と、ちょっと得意になった思い出があります。

日本にいながら、いっちょ「英語漬け」になってみるかぁ、という方は、ひたすら英語の文章を読み、英和辞典に頼らずに英英辞典だけを使って勉強してみるのはどうでしょう?

ぼくはLONGMANを使っていましたが、書店でいくつかの辞書で同じ英単語を引いてみて、自分の好みにあったのを選ぶのがいいと思います。



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