選挙フェス香川、本間信和氏(SEALDs)と磯崎仁彦氏(自民党立候補予定)を招いて政治家サンドバッグ!


6月22日の公示が迫っている2016年の参議院選挙に向け、6月19日、高松市木太町の「Sanuki Vote Space」で、SEALDsのメンバー、本間信和さんと、参議院議員の磯崎仁彦さん(自民党立候補予定)を招いて「選挙フェス香川」というイベントが開催されました。主催は市民団体「選挙フェス・2016香川」。

司会・進行は、徳島大学総合科学部の饗場(あいば)和彦教授(国際政治学)。饗場教授が学生たちと始めた選挙に関する勉強会がきっかけで生まれた学生団体「TYME(タイム)」のメンバーも訪れていました。TYMEは政治に関わる人を招いて質問攻めにする「政治家サンドバッグ」というイベントを開催してきており、どうやら今回もその一環のようです。

前半は、SEALDsの本間信和さんのお話。




SEALDsの一員である本間信和さんは、筑波大学4年生で、教育社会学専攻。

今のような政治活動をするようになったのは、3.11の影響が大きかったそうです。福島第一原子力発電所の事故を受け、社会のことを見て見ぬふりをして自分には関係ないと思っていたら、いつか自分の足元をすくわれる日が来る、どころか、すでにその日が来たのだと。

SEALDsといえばデモのイメージだと思いますが、本間さんはもともとはデモが嫌いだったそうです。2012年頃からデモを見に行ったものの、うんざりして、絶望して帰り、日比谷公園でディスカッションをする日々。社会は今までの中央集権的で官僚主導のあり方から、市民の手づくりの方向へ進んでいかざるを得ないと思っていたら、その後、国政選挙で野党が惨敗し、特定秘密保護法案可決。ずっと議論を続けてきたけれど、とにかく反対だという想いを可視化していかないといけないのではないかという話し合いをし、既存のデモで乗り気になれないところがあるのなら自分たちでデモをオーガナイズしよう、ということで始められたそうです。

安保法制は可決されましたが、可決されたものは廃案にするしかない、ということで、2つめのフェーズとして、SEALDsのメンバーとともに、野党の関係者に対してロビーイング活動を開始(参院選の一人区[一人しか当選しない地域]において、自民党と公明党は候補者調整をして一人に絞りますが、野党は候補を乱立させてきました)。

その結果、多方面からの協力も得て、2016年2月19日には、野党5党(民主党、維新の党、共産党、生活の党と山本太郎となかまたち、社民党)が参院選や衆院補選など国政選挙での選挙協力を進めるという、党首合意が実現しました。

次に3つめのフェーズとして、衆議院補選(北海道5区および京都3区)で、選挙プランナーのような活動を開始。政治に対して諦めをもっているような人たちに、もう一度野党に託してみようという思いで投票してもらおうと、安保法制に反対するデモや勉強会などを行ってきた人たちに向けて、選挙に関する会を開くなどの活動をされてきたそうです。

このイベントへの参加もその流れ。

残りの時間で、今回の選挙の票読みや、バーニー・サンダースさんのアメリカ大統領選挙でのデザイン戦略などについて語ってくれました。





後半は、磯崎仁彦さん(自民党立候補予定)が登場し、香川大学法学部の学生さんも交えて、オーディエンスからの質問を受けながらトーク。

印象に残ったところを、ぼくの感想を入れながらご紹介します。

まず、非正規雇用が増えている問題について、磯崎さんは、「正規・非正規、どちらがいいかということではなくて、それぞれの人の選択の問題」「働き方が多様化しているので、いくつかの選択肢があってしかるべき」と話されていました。

好きな方を選択できればいいですが、仕方なく非正規で働かざるを得ない人は無視していいのでしょうか。これ、総務省統計局が発表している「労働力調査 平成28年(2016年)1~3月期平均」を見てみると、男性の非正規の職員・従業員(643万人)のうち、非正規の雇用形態についた主な理由を「正規の職員・従業員の仕事がないから」と回答した人が162万人 (27.5%、つまり4人に1人以上!)という実態があり、前年同期に比べて2万人も増加しています。同じように回答した女性は152万人で同じくらいの人数ですが、割合は男性より低い11.7%。というのも、「家事・育児・介護等と両立しやすいから」と答えたのは、女性で17.2%、男性でなんと1%。家事や育児や介護はいまだに女性ばかりに任せられて(押し付けられて?)いて、それは正社員の仕事をしながらだと難しい職場が多いから、非正規をしぶしぶ選んでいるわけです。「それぞれの人の選択の問題」として済まされることでしょうか。

オーディエンスには、知り合いだけを考えても、福島第一原発事故による放射能から避難して香川に移住してきた人が何人もいました。

「伊方原発の再稼働には賛成ですか? イエスかノーで」という質問には、「イエス」。

原発の規制基準を見直したから大丈夫、との理由。福島第一原発のように想定外のことは常に起き得るというオーディエンスからの切実な声に対しても、新規制基準に適合しているから大丈夫、との一点張り。

「今の原発問題の等々について、アメリカの関与があるかといえば、私は、日本の独自の判断だというふうに思っております」とのことですが、何を根拠にそうおっしゃっているのかは不明。原発や安全保障にいかにアメリカが関与しているかについて、はっきりとしたソースを示しながら追及している矢部宏治さんの著書をぜひ読んでいただきたいと思いました。


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日本はなぜ、「戦争ができる国」になったのか



また、オーディエンスからの「憲法改正には賛成ですか? イエスかノーで」の質問には、もちろん「イエス」。

「緊急事態条項」について議論が白熱しました。

磯崎さんのお話によると、「大災害や内乱、大規模テロが起きたとき、内閣総理大臣が緊急事態を発令し、指揮権をとって国民のみなさまの権利を制限することもありえますよ、ということを基本的な憲法の中に記するべきではないかということで、改正条項を入れましょう、ということ」。

本間さんは、これは「ワイマール期のナチスのヒットラーがやったことと全く同じじゃないか」「具体的に今の政権が暴走するとかではなくて、そういうものとして読めるものになってしまうおそれがある、ということがあるんじゃないか」「憲法に書かなくても、法律のレベルで解決できることがたくさんあるんじゃないかと。それを、わざわざ憲法を改正しなくちゃいけないのはどうしてなのか」と質問。

磯崎さんによると、今も災害対策基本法や国民保護法などの法律で国民に「協力」を求めることはできるが、協力を求めても、協力してくれなければそれで終わってしまうので、憲法で「指示」できるようにしなければいけないと。

本間さんはさらに、「国家緊急権を発動するときの具体的な課題や想定されている問題は? 現憲法下において、こんな問題が起こったら対応できないんだ、ということは具体的には何なんですか?」と追及。

磯崎さん「今の憲法の枠組みで、法律だけにゆだねれば、基本的人権を大きく制約することは抑制的に働きますので

「そりゃそうですよ」と本間さん苦笑。

磯崎さん「協力しか求められないわけですよ。協力というのは、協力してくれてはじめて実現する。ただ、現実やはり、指示をしなければ統制がとれない、ということもあり得ると私は思うんですよ。それであれば、そういうことを憲法の中に、ありえますよ、というふうに書けば、法律の中でも指示するというふうに書けると」

本間さん「テロとかが起こったときに、国家緊急権みたいなものを発動して基本的人権を制限して指示しないといけないシーンがあるということですか?」

磯崎さん「ありうると思います」

本間さん「たとえばそれはどういうことですか?」

磯崎さん「そこはなかなか、具体的にするというのは難しいですねぇ。今まで、具体的に考えてないんで」

オーディエンス「ないんじゃん!(失笑)」

磯崎さん「ないこと、ないですよ。テロが発生したときに、大災害のときには、ここから離れる・・・たとえば、居住とか、そういうものっていうのは…(略)」


その他、沖縄の米軍基地問題、税制度、学校での主権者教育など、いろんなテーマでのトークが繰り広げられました。自民党の候補予定者がこんなアウェーなイベントに来てくれるのはめずらしいらしく、最後はみんなで磯崎さんに拍手! 

「選挙フェス香川」はこれからも続き、今後は、野党統一候補予定者の田辺健一さんや、幸福実現党立候補予定者の中西利恵さんを招く予定のようです。


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