幸せな人生を送るには、どんな仕事をすべきなのか。



日本の義務教育は小学校から高校まで12年もあり、いろんなことを教えられますが、「どうすれば幸せな人生を送れるか」ということについてはあまり教えてくれません。

いっぱい勉強して、「いい」学校に進学して、「いい」会社か何かに入っていっぱいお金をもらえて「安定した」暮らしを送れるようにするのが学校の役割だと考えている先生や親が多いでしょうか。

自分の子どもにそういう人生を送らせようとして、「(子どもを)レールに乗せました」と話す(大学の)先生がいました。

そのレールの先に幸せがあると思うなら、そのままレールに乗って進んでいけばいいと思いますが、そう思わないなら、強引にでもレールから外れたほうがいいかもしれません。

ぼくは大学に入って東京で暮らし始めた頃、電車の中で生気を失った大人たちの姿を見て、ここにたどりつくレールには乗りたくないと思いました。「どうすれば幸せになれるか」なんて、特に考えたことはありませんでしたが、学生の頃はとにかく英語の勉強が面白く、英語の勉強を一生続けられるのなら自分の人生はそれで満足だと思っていました。

その後、英語から他のことへと関心が移っていきましたが、自分のやりたいことを追い求めているうちに、上の先生が子どもを乗せたようなレールからはずいぶん外れたところにたどり着きました。

学校や親や大人たちが敷いたレールを進んでも、その先に楽しい未来がないと感じている人も多いのではないかと思います。

でも、そのレール以外にどういう道があるのかを、学校や身近な大人たちはなかなか教えてくれません。インターネットや本で調べれば、いろんな生き方をしている人間を知ることができますが、自分にもそういう生き方ができるかどうか、やっぱり不安に思うものだと思います。

ぼくも5、6年前、フリーランスで仕事をしていくことを決めたとき、かなり不安がありました。周りには、長年どこかに勤めてからフリーランスになった人はいましたが、大学を卒業して数年しか仕事の経験がないままフリーランスになった人がおらず、自分くらいの能力でやっていけるのかあまり自信がありませんでしたが、その後、何とか楽しくやっています。

もちろん、皆が皆、フリーランスや自営業のほうがいいと思っているわけではなく、人それぞれ、自分に向いていると思う働き方をするのがいいと思いますが、学生の頃というのは、親や先生や周りの人の言うことだけを聞いていると、働き方のいろんな選択肢というのがなかなか見えてきません。

どんな仕事を選ぶかによって、学生を卒業した後の何十年という人生が大きく左右されるのに、ぼくもそうでしたが、「就活」の時期になって、ようやく真剣に考え始める人が多いのではないでしょうか。就活のマニュアルに従うと、浮かび上がってくる選択肢というのは、会社かNPOなどの非営利組織に勤めるか、国や地方自治体の公務員になるか、だいたいそんな感じかと思います。そこでやりたいことがあればいいですが、特にやりたいことがなく、何となくのイメージでどれかを選んで、入ってみてたまたまあてがわれた職務をこなし、それが楽しくてやりがいを感じられればいいですが、つまらない、くだらないと思うことを毎日しつづけなければいけないとしたら、自分の才能を発揮できず、もったいないことだと思います。

「好きなことを仕事にする」という本をつくったのは、世間で一般的なレールから外れた人たちの生き方や考え方を紹介したい、という思いがあったからです。



この本に登場する方たちも、何の悩みもなく完全な幸せの中で生きているわけではないと思いますが、仕事中も目を輝かせ、充実した人生を送っているように見えます。

それぞれ違った仕事をしていて、そこに至るまでの経緯ももちろんそれぞれですが、共通するのは、誰かが押しつけてくる価値観に従わず、自分が好きなこと、やりたいことを追求し、それを日々の仕事にしている、ということです。

「好きなことを仕事にするなんて甘い」と考える方もいるかもしれません。「好きなことを仕事にすれば、好きなことも好きでなくなってしまう」と思う方もいるかもしれません。たしかに、好きなことを仕事にすれば、楽しいことだけなく、つらいことや苦しいことも伴うことがあると思いますが、それによって好きなことが好きでなくなればそれまでです。そういう困難を乗り越えてでも好きでいられたら、好きなことをして充実感のある人生を送れるのではないかと思います。

「幸せな」人生と言うとぼんやりしてわかりづらいので、「充実した」人生かどうか、と考えたほうがわかりやすいかもしれません。人間が充実した人生を送るには、「個人の自由」が与えられていることが大事ではないかと思います。組織や誰かの意向に関わらず、自分の考えや想いを表明でき、自分が望むものだけを自分の好きなカタチで生み出していける仕事であるかどうか。ぼく自身、まだそういう仕事ばかりしているわけではありませんが、少しずつ、そういう方向へ向かっていきたいと考えています。