野生の味と共にある、子どもの頃の記憶 ~グミの実を食べて~

自転車をこいでいると、懐かしい赤い実が目に入りました。



和歌山市で暮らしていた子どもの頃、家の前の駐車場の奥のブロック塀を越えたところにこの木が生えていて、この実が成るとパクパク食べていました。

向かいの家に住む祖母に見せると、グミの実だと教えてくれました。食べ過ぎるとお腹をこわすと言われ、もっと食べたいところを我慢しました。

口に入れると、甘酸っぱくて、渋みもあって、舌がざらざらする食感があります。久しぶりに食べてみて、その懐かしい食感を思い出しました。たしかに大量に食べるものではなさそうです。

先日書いた、小学校の農園のミニトマトにしても、グミに実にしても、子どもの頃に食べた、自然に近い食べものの味というのは不思議と鮮明に記憶に残っているものです。どこどこのスーパーで買ってきた、あのときのニンジンの味、というような記憶はありません。

子どもの頃に体験した味や香りなどの五感の記憶は、大人になってからも、子どもだった頃の自分を思い出させてくれます。グミの実を食べると、家の周りで兄弟や従兄弟と遊んでいた時間がよみがえってくるし、野生的な味のミニトマトを食べると、小学生の頃に見た景色が浮かんできます。

子どもの頃、外でも遊びましたが、家の中でゲームをしている時間のほうがおそらく多く、今思うと、もっと自然の中で遊んでいればよかったなぁと思います。

とはいえ、大人になってからでも遅くありません。自然から離れていた反動からなのか、ぼくは都会暮らしが嫌になり、2年前から香川の綾川町という、田園風景の広がる町に移住し、野菜や米を育て、森に通う暮らしをしています。



これは、近所の道路沿いで育つ桑。放置されて誰も管理していないようなので、ここを通るときは時々、自転車を停めて、鳥になった気分で桑の実を数粒、いただいています。

桑の実を食べたのは、香川に来て、この木が初めてです。最初の出会いというのは特別で、他の場所で桑を見かけても、この木のこおが頭の中で浮かんできます。この先、桑の木を見るたびに、何度もこの木を思い出すことでしょう。


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