田中優さんが提案する「タテ」「ヨコ」「ナナメ」の運動。どれかを否定する必要はない。

環境活動家の田中優さんの「戦争をやめさせ環境破壊をくいとめる新しい社会のつくり方―エコとピースのオルタナティブ」という本で、戦争の原因となっているのは「エネ」(エネルギー)、「カネ」(お金)、「軍需」であることが説明されています。




そういう仕組みを支えているのは、望まないにしろ、ぼくたち一人一人の暮らしです。

それを変えていくのは不可能なことではないとし、田中優さんは、それを別な仕組みに変えていくための運動として「タテ」「ヨコ」「ナナメ」の3つの方向性に整理されています。

facebookの田中優コミュニティの投稿で、その具体的な例が挙げられています。(以下、著書の内容と併せて編集しています)

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【タテ方向】
政治に影響を与えること
・自分が政治家になる
・選挙に行く
・よい政治家を応援する
・政治家に声を届ける

【ヨコ方向】
身近な人に話すなど、人々のムーブメントを起こす方法
・署名やデモなどのムーブメントに参加する
・SNSや自分の得意なことでたくさんの人に知らせる

【ナナメ方向】
全く別な仕組みを考え、現実に新たなやり方をやって見せる方法
・日本の軍需産業の製品をなるべく買わないようにする
・大手の銀行・生命保険から離れ、よい金融機関を選ぶ
・優良企業に投資する
・地元でNPOバンクを作ってみる。または出資して応援する。

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こうして見てみると、いろんな方法があるものです。人それぞれ、自分の得意な方面でいろいろ活動しているものです。

そこで思うのが、自分の得意な方面以外の方法を完全に捨て去ってしまうのはもったいない、ということ。

「ナナメ方向」は「オルタナティブ」な方法とも呼ばれ、そういう若者がぼくの周りでも増えてきています。軍需産業の製品や大企業の製品はなるべく買わず、顔の見える相手から手作りの製品を買ったり、オーガニックコットンや麻の草木染めの衣服を着て、お金(円)に頼らずに住むように野菜やいろんなものを自分でつくり、物々交換を楽しみ、自分が応援したい企業や作り手の製品を買うことでその相手を応援し・・・というような。

「ナナメ方向」は楽しい方法で、やり方によっては、自分の身の回りは「地上の天国」と思えるような暮らしに入ることも可能かもしれません(地球全体が平和にならない限り、いつどこから危険が迫ってくるとも限りませんが)。自分がこうだと思う暮らしを自ら実行していればいいのだと、「ナナメ方向」ばかり追求していると、世間のことにはだんだん疎くなっていきがちです。

「ナナメ方向」に入ると、「スピリチュアル」なことにも興味を持ち出す人も多く、「スピリチュアル」な本を中途半端に読んだりすると、ネガティブな情報に触れるのが嫌になり、ネガティブ情報だらけの政治の「タテ方向」を無視してしまいがちです。ぼくも最近までそうでした。政治のことは勉強しないとよくわからないし、日常的に情報を追っていないと、取り残されてしまいます。

「ナナメ方向」を追求しながらも、政治にも関わっていかないと、自分の利益や権力のために「タテ方向」で活動している人たちの好き勝手にされてしまいます。「ナナメ方向」も大事ですが、それと同時に「タテ方向」でも力を加えていかないと、「ナナメ方向」で可能なこともどんどん狭められてしまいます。例えば、米や野菜を自分で育て、何でも自分でつくって自給自足の暮らしをしていくつもりが、野菜の自家採種(自分の畑の野菜の種を採りついで育てていくこと)を禁止する法律ができたら大変です。

ぼくは「ナナメ方向」の活動を日々の暮らしで実践し、ブログや本を書くのは「ヨコ方向」。「タテ方向」は苦手でしたが、相方の影響で政治のことも勉強しはじめ、ようやく関心を持ち、ブログでも政治のことを少しずつ発信しています。

「タテ」「ヨコ」「ナナメ」、得意な方面に力を入れつつ、他を放棄したり否定したりするのではなく、柔軟に行き来するのが楽しいし、結局はそれが、自分の望む世界をつくっていく近道ではないかと思います。