日本のミサイル防衛(MD)システムは有効か? 防御を強化すれば攻撃も強化され「いたちごっこ」になる危険性も

「ミサイル防衛(MD)システム」というのがあり、日本にミサイルが飛んできても撃ち落とす用意があるという話を聞いたことがありますが、そんなことが本当に可能なのか、疑問に思っていました。

最近読んだ「僕たちの国の自衛隊に21の質問」(半田滋 著)という本に、この疑問に対する解説が書かれていました。




まず、日本のミサイル防衛(MD)システムというのは、飛んでくる弾道ミサイルに対し、海上のイージス護衛艦に積んだ迎撃ミサイル「SM3」を発射し、それでも撃ち落とせなかったミサイルを今度は地上に配備された迎撃ミサイル「PAC3」で撃ち落とす、という二段階方式になっているそうです。


地上配備型迎撃ミサイル「PAC3」の発射機は、日本に32基あるということですが、間を空けずに2発連続で撃てるように2基ずつ並べて設置されるので、全部で16カ所にしか設置できません。PAC3が防御できるのは直径約50キロの範囲で、日本列島の大半が無防備だといいます(米軍は、沖縄の嘉手納基地を守るために24基の発射機を配備しているそうです)。

防衛省の説明では、PAC3は移動式なので、手薄になっているところに持っていって防御できると言っているそうですが、仮に北朝鮮が日本に向けてミサイルを発射したとして、着弾までにかかる時間は10分程度と言われています。とても間に合うとは思えません…。

PAC3で迎撃するテストがアメリカで行われて成功しているそうですが、そのときの模擬の弾道ミサイルのスピードは音速の数倍程度。仮に北朝鮮から飛んでくる場合は音速の10倍以上で、その命中率が確かめられたことはないとのこと。

どうやら、難しそうですね…。そもそもミサイルを日本に向けて発射してくる国が出てこないように、外交努力を続けるのが一番大事だと思います。

明治大学の山田朗教授は、「マガジン9」に掲載されたこちらの記事で、迎撃システムを厳重にすることによる逆効果について語っています。

相手がたくさんの迎撃システムを持っていれば、攻撃する側は当然できるだけたくさんのミサイルを撃とうとしますよね。守りを固めれば相手はさらにそれを何とか切り抜けようとしてたくさんのミサイルを配備する、そうすると守る側はさらに迎撃ミサイルの数を増やす、という具合に悪循環に陥るのです。

冷戦期に、米ソ間では「防御システムはなるべく限定しよう」ということで折り合いをつけ、弾道弾迎撃ミサイルの配備を制限した「ABM協定」というのを結んでいたそうです(2002年にアメリカが脱退して事実上、無効化していますが)。

守りを強化したからといって、攻撃を諦めよう、ということにはならず、むしろ、もっと攻撃力を高めよう、となってしまうわけです。時間がかかっても、言葉による外交で、お互いに攻撃する必要のない関係をつくっていくしかありません…。